新卒採用⑤ 養成校との関係づくり、何から始める?

新卒の歯科衛生士を採用したいと考えたとき、多くの院長が「養成校との関係をどう築けばよいのか」という疑問にぶつかります。ただ、ここで一度立ち止まって整理しておきたいのは、「関係づくり」が何を意味するのか、という点です。養成校は教育機関であり、学生を医院に紹介したり、就職先をあっせんしたりすることを目的とした組織ではありません。今回は、学校とどのような関わり方であれば無理なく、かつ誤解のない形で信頼関係を築いていけるのかを、具体的な入口とともに整理します。
※養成校の方針や運用は、学校ごとに異なります。求人の受け付け方法、実習の受け入れ条件、学生のアルバイトに関するルールなどは、必ず各学校の窓口にご確認ください。
最初に整理しておきたい、学校との付き合い方の前提

養成校にとって最も大切な役割は、学生を歯科衛生士として育て、国家試験に合格させ、社会に送り出すことです。就職支援に力を入れている学校は多く、求人票を掲示したり、就職指導を行ったりしていますが、それはあくまで学生が自分の意思で進路を選ぶための情報提供や支援という位置づけです。
この前提を踏まえると、「学校の教育に協力しながら、医院のことを知ってもらう」という関わり方がとてもスムーズであり、その積み重ねの結果として、学生が数ある選択肢の一つとして医院を選んでくれることが理想です。就職はあくまで結果であり、関わりの目的そのものにしないことが、学校からの信頼を得るうえでも重要です。
関係づくりのステップ
1:学校に求人を出す
学校との最も基本的な接点は、求人情報を学校に届けることです。求人の受け付け方法は、学校によってさまざまです。学校宛てに求人票を郵送・メールで提出する形をとるところもあれば、学校が運営する求人サイトに医院自身が情報を登録する形をとるところもあります。まずは、ホームページや就職担当、事務の窓口に問い合わせて、求人を受け付けているか、どのような方法で、いつ頃までに提出するのかを確認するところから始めましょう。
求人票を出す際は、新卒の学生が安心して読めるよう、次のような情報を具体的に書いておくと親切です。
- 新卒者を対象とした教育体制や、入職後の研修の流れ
- 先輩スタッフによるサポート体制(指導役の有無など)
- 見学や実習の受け入れが可能かどうか
- 給与・休日・福利厚生などの基本的な条件
求人を出すことは、学校に医院の存在を知ってもらう第一歩になります。ただし、求人票を提出しただけで、すぐに応募が来るとは限りません。学校や学生からは、「どんな医院なのか」が分かる情報が少ないと、判断のしようがないためです。求人はスタートラインであり、次に紹介する実習の受け入れなど、実際の関わりを通じて信頼が育っていく、と捉えるのが現実的です。
2:実習・研修先として受け入れを申し出る
歯科衛生士養成校では、カリキュラムの中に臨床実習や見学実習が組み込まれており、学校は実習を受け入れてくれる医院を必要としています。そのため、実習先や研修先としての受け入れを医院から申し出ると、学校から喜ばれることが多いです。学校にとっては、学生に臨床の現場を経験させる機会を確保できることが大きな助けになるからです。
そして、実習に来た学生が、医院の雰囲気やスタッフの姿勢に良い印象を持てば、「ここで働きたい」と感じてくれるかもしれません。もちろん、それは結果としてそうなることがあるという話であり、実習の場を採用活動の手段として扱うことは避けなければなりません。実習はあくまで学生の学びのための時間です。学生にとって「学びの多い実習だった」と思ってもらえるかどうかが、医院への信頼につながり、その延長線上に、就職という選択肢が生まれることもあります。
実習を受け入れる前に整えておきたいこと
- 受け入れの可否、人数、時期について、学校の実習要領を確認する
- 実習中の指導を担当するスタッフを決めておく
- 実習の目的や到達目標を、学校とあらかじめすり合わせる
- 患者さんへの説明・同意の取り方や、個人情報・感染対策のルールを院内で共有する
- 実習後に、学生へのフィードバックや、学校への報告を行う流れを決めておく
学校によっては、実習の受け入れ先に一定の条件(指導者の要件など)を設けている場合もあります。まずは学校の実習担当に、受け入れを検討していることを伝え、必要な手続きや条件を確認しましょう。
3:学生向けの歯科助手アルバイト求人を出す
学校によっては、在学中の学生向けに、歯科助手のアルバイト求人を受け付けているところがあります。学生にとっては、収入を得ながら歯科医院の現場を知る機会になり、医院にとっても、学生の人柄や働きぶりを知る機会になります。実際に、歯科助手のアルバイトとして働いていた医院に、そのまま歯科衛生士として就職するケースは少なくありません。お互いをよく知ったうえでの就職になるため、ミスマッチが起こりにくいという面もあります。
アルバイトを受け入れる際の留意点
- 学業を最優先にする:授業・実習・試験の時期には、シフトを柔軟に調整する
- 学校のルールを確認する:アルバイトの可否や、届出の要否は学校によって異なる
- 業務範囲を守る:学生アルバイトが担うのは、歯科助手として認められる範囲の業務に限られる。歯科衛生士の免許が必要な行為を任せることはできない
- 労働条件を明確にする:勤務時間や賃金などを、書面で分かりやすく伝える
特に、業務範囲については、資格の有無に関わる大切な点です。歯科衛生士の免許を必要とする処置を、学生アルバイトに担当させることは認められません。歯科助手としてできる業務の範囲は、あらかじめ整理したうえで、学生にも丁寧に説明しておきましょう。
避けたい関わり方
関係づくりを意識するあまり、学校や学生に負担や誤解を与えてしまうことのないよう、次のような関わり方は避けたいところです。
- 学校に対して、学生の紹介や推薦を求める
- 学校を通さずに、学生に個別に接触したり、個人情報を求めたりする
- 実習やアルバイトの場を、就職の勧誘や囲い込みの手段にする
- 入職や内定を、実習・アルバイトの条件として約束させる
- 他の医院を引き合いに出して、自院を優位に見せる
学生が複数の医院を比較し、自分の意思で就職先を選べる状態を保つことは、学校にとっても、学生にとっても大切な前提です。この前提を守る医院こそ、結果として学校から信頼され、実習の受け入れなどの関係も長く続いていきます。
関係づくりは、小さな一歩から
最初から、すべての入口に取り組む必要はありません。たとえば、次のような順序で、できるところから始めるのが現実的です。
- 近隣の養成校の就職・実習担当の窓口を調べ、問い合わせる
- 求人の受け付けの有無を確認し、可能であれば新卒向けの求人を提出する
- 実習の受け入れを検討し、学校に相談する
- 学生向けアルバイトの受け付けがあれば、必要に応じて求人を出す
いずれの入口も、一度きりで終わらせず、毎年同じ姿勢で継続することが、信頼を育てるうえで重要です。学校の担当者は異動することもあるため、担当者が変わっても医院の姿勢が変わらない、と感じてもらえることが、長く続く関係の土台になります。
まとめ
養成校との関係づくりとは、学生をあっせんしてもらうことではなく、学校の教育に協力し、医院を知ってもらうことです。求人を提出する、実習先として受け入れる、学生向けのアルバイト求人を出すといった入口を通じて、学校や学生との信頼を少しずつ積み重ねていく。その延長線上に、学生が自分の意思で医院を選んでくれる可能性があります。次回は、内定を出した後に起こりやすい「内定辞退」を防ぐためのフォローの仕方について解説します。
新卒衛生士採用シリーズ(全8回)
- 新卒衛生士とは?基礎知識と採用市場での位置づけ
- 新卒衛生士を雇うメリットと注意点
- 新卒採用はいつから動くべき?年間スケジュールの考え方
- 新卒衛生士を雇う準備|求人・院内体制・教育の3つの軸
- 養成校との関係づくり、何から始める?
- 内定辞退を防ぐ、内定後のフォローの仕方
- 新卒衛生士の教育体制、プリセプター制度とは
- 新卒か中途か、自院に合った採用バランスの考え方
